こどおじの生活

【ONE PIECE FILM RED感想】正義感は人を狂わせる

8/6にワンピース新作映画「FILM RED」を鑑賞した。

夏休みの真っ最中、しかも大人気漫画の初上映日となると相当な観客数だった。

1週間前からKINEZOで予約して、IMAXシアターで鑑賞。

筆者はワンピース原作勢なのだが、実はこれまで映画館でワンピース映画を鑑賞したことは無い。

興行の都合上、ワンピース映画はどうしてもカジュアルな内容になるからだ。

筆者は逆張りオタクであるゆえ、カジュアルなワンピース映画には少し抵抗感があった(TV放映したものは見てた)。

しかし今作は、あの赤髪のシャンクスにフォーカスが当てられている
これは見に行くしかないと、重い腰を上げて決起。

従来の作品には無い、前衛的な要素を積極的に盛り込んでいる作品で非常に見応えがあった。

いろいろと書きたいことはあるのだが、今回は「ウタの性格」について、自分の性格と照らし合わせても共感できる節があったのでフォーカスしてみる。

ちなみに入場者特典で貰える冊子にはウタの細かい心理描写があるそうだが、それを見る前に思いの丈を書こうと思う。

(ここからはネタバレ注意!)

行き過ぎた正義感は人を狂わせる

ウタは劇中、自身の悪魔の実の能力を使い観客全員をウタウタの世界へ取り込んでしまう。
ウタが暴走した一番の理由は、やはり彼女の「偏った正義感」だろう。
さらに彼女が持つ音楽の才覚性格が、正義感を暴発させてしまった。しかし彼女の性格や考え方には共感できる要素もあったので、その辺りも含めて感想を書こうと思う。

克服できない過去のトラウマから生じた価値観

第一印象として、ウタはかなり内向的な人間だと思った。

その描写は劇中にも見られた。
彼女が造る「ウタウタの世界」では、最終的に人間を無機物へ変換してしまった。これは観客達の「早く家に帰りたい」、「ライブで歌を聴く事だけが幸せじゃない」という指摘を遮断し、コミュニケーションを断つためだ。

彼女の歌詞にもある通り「自分の幸福=他者の幸福」だと信じて疑わず、他者とのコミュニケーションを拒否する描写は、まさに彼女の内向的な性格を表している。

彼女は過去のトラウマが原因で、他者と意思疎通をするのが苦手になったのだと思う。
過去のトラウマを払拭できず、1人で悩みを抱え込んだ。
その結果、自分1人で解決しようとする性格になってしまったのではないかと。そして同時に、他者との関わりを絶ったのだ

そして彼女の内向的な性格は、偏った正義感を形成した。

  • 自分が体験したような、辛い経験をしてほしくない
  • 海賊が居る限り、争いは無くならない(全部海賊が悪い!)
  • 自分の力があれば、争いのない世界を作れる(出来るのは自分しか居ない!)
  • ならば新時代(ウタウタの世界)へ全員引き込んでしまおう!

他者との関りを絶ち、一人で抱え込んだ彼女が考えた結論がこれだったのだ。

この瞬間、彼女は自分自身を救世主と信じて疑わなくなったんだと思う

彼女の身近に友人や同僚が居れば、ここ彼女の暴走を止められたのかもしれない。

内向的な性格がもたらす承認欲求 


「自分の歌を全世界へ発信してるんだし、むしろ外向的な性格じゃない?」という反論があるかもしれない。


しかし、内向的な人間ならば自己発信しないという前提は必ずしも当てはまらないと思う。


これは私の主観だが、内向的な性格であるほうが承認欲求が高くなる傾向がある

普段の自己発信が少ない分だけ、その反動で喋りたい欲望が強く表れてしまうのだ。

これは個人的な経験にも当てはまる。


私も内向的な性格をしているが、例えば大勢の前でのスピーチはあまり苦にならない。普段は他者と話さない分だけ、一方的にたくさん話したいと思ってしまうのだ。人との関りが少ない分だけ、承認欲求が高くなっている典型例なのだ。


多かれ少なかれ、自己承認欲求は誰しもが持ち合わせている。

ウタも孤独に過ごした時間が長い分、自身を認めてほしいという自己承認欲求が人一倍大きいかったんじゃないだろうか。
(厳密に言えば1人じゃないけど、時間の長さを考えるとほぼ孤独に近い。友人も居ないし。)

膨れ上がった承認欲求への着火剤

ウタの抑圧された感情を大きく後押ししたのは、やはり漂流した電伝虫だろう。
彼女はある日、海辺に漂流している電伝虫を見つけた。
彼女にとって、まさに千載一遇のチャンスが舞い降りてきたのだ。

人並外れた音楽の才覚がある。
自分の歌声で人々を幸せにできる可能性がある。
目の前の電伝虫を使えば、自分の歌声を全世界を発信できる。
他者を幸せにして、新時代を創造できる。

ウタと電伝虫の出会いは、彼女の中で膨れ上がった自己承認欲求を爆発させるには十分なトリガーだった。
これで自分の理想を叶えるための完璧な舞台が整ったのだ。
他者とのコミュニケーションが必要なく一方的に情報発信できる環境」を手に入れた彼女は、まさに水を得た魚。
これまで彼女の境遇も含めて考えると、エレジアの暴走は起こるべくして起こったものなんだろうと思った。

冒頭でも書いたが、FILM REDの一連の出来事は、

  • ウタの内向的な性格
  • 音楽の才覚
  • 偏った正義感

これらがシナジーを生んだ結果起きた大事件なのだ。

まとめ

正義感の暴走は、時に取り返しがつかない事もある。
日常生活で思わず語気を荒げてしまい、人間関係を壊してしまった経験はないだろうか。
人が暴走するのは「自分が正しく、相手が間違っている」と信じて疑わない時だ

そんな時自分を止めてくれるのは、自分を想ってくれる友人や同僚、家族だ。


暴走したウタを止めたのが幼馴染のルフィであるように。


理解できない価値観に触れたときには、「相手はなんでこんなこと言うんだろう?」と一旦は寄り添うことも大事だと思う。

多様性を受け入れられる精神を持てることも、社会集団に属するメリットの一つ。

多様性を受け入れることで社会集団の中で穏便な人間関係を築き、知らず知らずのうちに偏った正義感を育てないように気を付けようと思う。

散々ウタの心情を書く中で、筆者はウタのアンチかと思われるかもしれないが、全くそんなことは無い。


彼女の考え方や性格を抽象化して自分を見つめ直しているだけなので、ウタを非難するつもりは全く無い。


彼女の独特なデザインはかなり好きだし、歴代ヒロインの中でもウタの好感度はトップレベルだ。

ワンピース原作も最終章に入りどんな展開を見せてくれるかと思いワクワクする反面、

ONEPIECE FILM REDという作品は、ワンピースの世界観だけでなく自分の人生を大きく見つめ直す大きな機会になったと思う。

Ado氏の歌唱力やミュージカル描写も、これまでのワンピース作品に見られない斬新な要素だ。

作品に興味を持たれたら、ぜひ鑑賞してみてほしい。

  • この記事を書いた人

こばやし秀介

■死んだ目をしながら労働する子供部屋おじさん
■ Fラン卒・友人ゼロ・底辺エンジニア社畜
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